賃貸事務所を借りる方は、契約する前に重要事項の説明を受けると思います。
その説明の中に補足として「短期賃貸借制度の廃止について」という
項目があります。
この「短期賃貸借制度の廃止」とはいったいどういうものなのか。
法律用語で固められ、難しく表記されている事が多いので、
ここで、簡単にご説明してみたいと思います。
まず、廃止された短期賃貸借制度とは
前提として、原則的に抵当権設定登記後に締結された賃借権は、抵当権者(債権を有している者)に
対抗出来ませんでした。
抵当権が実行された場合、賃借人は、競売により競落した買受人に対し、
借地や借家を直ちに明け渡さなければなりませんでした。
また、敷金も買受人に引き継がれませんでしたので、返済資力がない旧所有者にしか請求できませんでした。
このように賃借権が保護されない状態では、抵当権が設定されている建物や土地については、
気軽に借りることはできなくなり、抵当権付不動産の有効利用が妨げられてしまいます。
そこで、旧民法では、建物は3年、土地は5年を超えない賃借権について、
抵当権者に対抗できるものとし、短期の賃借権に限りこれを保護する法律になっていました。
(短期とはつまり、上記の期間のことです。)
上記の短期賃貸借制度がなくなった(平成16年4月1日)ことについて、
賃貸借契約前に行う重要事項説明の際に補足しているのです。
制度を逆手にとった権利の濫用
上記のように、元来は賃借人を保護するためにできた制度ではあったのですが、
賃貸借の事実がないのに、敷金を預けていたとして多額の返還を請求したり、
高額の立ち退き料を請求するなど、制度を濫用して抵当権の執行が
できなくなるなどのケースが増えてしまいました。
このような理由から短期賃貸借制度は平成16年3月末日をもって廃止になりました。
制度が廃止されたということは、
単純に考えると、新しい所有者には賃借人は権利を何も対抗できないので、
移転先も決まらない状況で直ちに退去しなければならず、
敷金も前の所有者(資力がない可能性が高い)にしか
請求できないということになってしまいますね。