不動産の取引、契約というものは、人生の中で数えるくらいしか行なわないものです。
頻繁に引越しをする方は別にして、一般的には、3回~4回くらいではないでしょうか。
そんな、あまり馴染みのない不動産契約。
契約内容は充分に注意しておきたいところです。
そこで今回は、「契約書の読み方」と題して、賃貸借契約の解除と解約の項目について、解説してみたいと思います。
契約解除と解約・更新拒絶
- 契約解除
- 賃貸借契約の当事者が義務を果たさない場合、相手方から契約を終了させること
- 契約解除には、義務違反に伴う損害賠償があります。例えば入居者が部屋を粗末に扱い、破損がひどくて契約を解除するようなケースでは、その修理費用が対象となります。また、建築中でまだ完成していないオフィスビルを借りる契約をしたにもかかわらず、オーナーの不備により完成が遅れたという理由で、借りる側から解除した場合などは、別のオフィスを探すまでに一般的にかかる費用が損害賠償の対象となります。
- 解約
- 義務違反はなく、どちらか一方または双方の事情で契約を終了すること。
- 期間が決まっている契約で途中解約が予定されている場合と、期間が決められていない契約を途中で終了させる場合です。
- 更新拒絶
- 義務違反はなく、どちらか一方または双方の事情で契約を終了させること。
- 期間が決まっている契約で、その期間満了時点で更新することをやめる場合です。
契約解除と契約書
契約解除は、賃貸借契約を終了するのですから、相手にとっては不利益といえます。
とはいえ、双方の立場で考えるとオーナーは賃料が入らなくなるだけの不利益ですが、入居していた企業にとってはその日から仕事ができなくなってしまいますので、事態は深刻です。
なお、入居者の義務違反で解除される場合については、その理由を契約書に記載されているのが一般的です。
例
第○条(契約解除)
入居者が下記の事項に該当したときは、家主は何ら催告することなく、本契約を解除することができる。
- 賃料の支払を1ヶ月でも怠ったとき
- 本物件を第三者に転貸したとき
- その他本契約に定める入居者の義務に違反したとき
それでは、このようなな契約書の定めは全て有効かというと、必ずしもそうではありません。
例えば、賃料の滞納ですが、どなたでも不注意はあり得ますので、その程度のことで部屋を出されたり、入居者の義務といっても、ゴミの出し方を間違った程度で解除されたら、たまったものじゃありません。
そのために、このような条項は借地借家法の規定で無効とされています。
ただし、賃料の滞納については、貸主が期限を決めて催促したにもかかわらず、それでも支払わない場合や、不払いの期間が6ヶ月以上の長期になってしまった場合には解除が認められます。
また、入居者としての義務違反については、毎日騒音を出して他のテナントを困らせていて、貸主が再三注意をしても改まらない場合には、これも解除が認められます。
つまり、入居者が契約を解除されるのは、余程の事情がある場合です。
しかし、義務違反はやってはいけないことに変わりはなく、一度なら解除の理由とならないような軽度のものでも、度重なれば充分な解除理由になります。
その場合、契約書に解除理由として記載されていることは、解除を認める方向で考慮されていますので、契約書の記載を無視してよいということではありません。
借主からの契約解除
借主からの契約解除は、貸主に義務違反があった場合にされます。
ただし、貸主に義務違反がある例はそれほど多くありません。
しかし、他のテナントの騒音などを貸主が放置して注意をしない場合や、漏水などで困っているのに修理をしないなどは、貸主の義務違反といえますので、その事務所を出たくなった場合には、貸主の義務違反を理由として契約を解除することができます。
その義務違反を理由に、次のオフィスビルに要した費用(礼金など)の賠償を請求することもできますが、そこまで要求するのは現実的には難しいでしょう。
解約と契約書
解約は、当事者に義務違反がなくても、どちらか一方、もしくは双方の事情で契約を終了させること。
これは、期間が決められていない契約を終了するケースと、期間が決まっている契約を途中解約するケースがあります。
- 期間の定めがない契約
期間の定めがない契約なんて見たことないという方が多いのではないでしょうか。
実際、一般的な賃貸事務所の契約で契約期間が決められていないケースというのはほとんどないでしょう。
では、どういう場合に期間の定めのない契約という状況なるのかというと、当初は期間が決まっている契約でも、満了時に合意で更新されないまま、入居者が引き続き使用していたという場合には、その契約は期間の定めのないものとされます。
この状況を法定更新といい、更新後の賃料の額について協議が整わない場合や、貸主が更新を拒絶したのに、入居者がそれに応じなかったというような場合がそれにあたります。
期間の定めのない契約においては、双方いつでも解約を申し入れることができます。
解約の申し入れあると、貸主からは6ヶ月、借主からは3ヶ月の期間で賃貸借契約が終了することになります。
しかし、貸主側からはその申し入れに正当な事由が必要とされていて、申入れ後6ヶ月が経過しても借主がその建物の利用を続けている場合は、遅滞なく異議を述べなければ、契約は終了しません。 - 期間に定めがある契約の中途解約
期間に定めがある契約のほとんどは、中途解約についての規定があります。例
第○条(解約)
入居者は6ヶ月前に書面により予告をすることによって、本契約を解約することができる。
ただし、解約予告日から6ヶ月分の賃料等相当額を支払えば、入居者は本契約を即時解約できる。このように入居者は期間が終わるまで待つ必要なく、また契約書で定められた分(上記例では、賃料等の6ヶ月分)を支払えば、その日に解約することができます。
※賃貸事務所の場合、解約予告期間は3ヶ月か6ヶ月が一般的。賃貸マンションなどの居住用では1ヶ月が多いです。注意すべき点とすれば、すべての契約書が中途解約を認めているのではないこと。
中途解約の規定がない場合には、貸主側でも期間の満了までの賃料収入を期待しているので、解約をしようとするのであれば、残りの期間分すべての賃料を支払うということになってしまいます。
契約するときには、契約書に中途解約の条項があるかどうかを注意して見て下さい。
もし入っていなければ、入れてもらうようにすれば、安心して入居することができます。
更新拒絶と契約書
大前提として、入居者が更新を望んでいるのに、貸主が拒絶することはできません。
※定期建物賃貸借の場合は、期間満了で契約が終了しますので、更新という概念がそもそもありません。
借主としては、貸主の拒絶を無視して使用し続けていれば、契約は自動的に更新されたことになります(法定更新)
このような場合では、貸主は賃料の受取りを拒否することが多いのですが、その場合には最寄りの法務局などに賃料を供託することができます。ただし、貸主が合法的に更新を停止できるケースがたった一つだけあります。
それは、貸主が期間の満了する6ヶ月以上1年内に借主に対し「更新はしない」と予告した場合で、さらに貸主に正当な事由がある場合です。しかし、この正当事由というのはよほどの事情で無いかぎり認められることは少ないですから、実際には心配する必要はほとんどありません。
賃貸借契約をする場合には、解約や解除について注意してみて下さい。
今回のこの記事を参考にしていただければ幸いです。
★ 賃貸借契約書の読み方 – 賃料の支払いと賃料改定- も、ぜひお読み下さい。
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