賃貸借契約書の読み方 ~借主の義務と禁止事項~

貸主の義務と禁止事項

契約書の読み方シリーズです。
3回目の今回は、借主の義務と禁止事項についてです。

前回の記事
賃貸借契約書の読み方~契約解除と解約~

前々回の記事
賃貸借契約書の読み方~賃料の支払いと賃料改定~

これまでの記事も、ぜひお読みください。

 

借主の義務

賃貸借契約書では入居される借主のいろいろな義務が定められています。
筆頭にくるのは「賃料の支払い義務」ですが、それ以外にも「使用上のルールを守る義務」や、「修繕費用を負担する義務」があります。
使用上のルールを守る義務とは、例えば共用部に荷物を置かないといったことです。
契約書では、「管理義務」または「禁止事項」などの条文で、それらの点を明記しています。
修繕費用を負担する義務とは、入居者の不注意で設備を壊したり部屋を汚してしまったときに、入居者が費用を負担して元の状態に戻す義務のことです。
これも契約書に明記されます。

 

禁止事項はいろいろある

契約書では、借主が守るべきルールを定めています。その条文は「禁止事項」「迷惑行為の禁止」といった名称になっています。
賃貸事務所の契約で代表的なものは、転貸の禁止や保証金の返還請求権の譲渡の禁止などがあります。
その他には

  • 共用部に荷物を置く
  • 深夜に騒音を出す
  • ペット飼育
  • 楽器の演奏
  • 敷地内(駐車場を除く)に車両を停車する
  • 同居人の増加 など

これらの行為は、一概に迷惑行為とは断定できませんが、貸主と借主との関係は契約書によって決まりますので、賃貸借契約書に定められているのなら入居者は、それに従わなければなりません。

 

禁止事項の定め方

禁止事項を契約書で定めるとき、その定め方は主に3つの方法があります。

  1. 禁止事項を列挙
    禁止事項を契約書の中に一つ一つ明記する
  2. 迷惑行為を一律に禁止する
    契約書の中で「他人に迷惑を与える行為はすべて禁止する」と定める
  3. 禁止事項を使用細則に記載
    契約書に「禁止事項は使用細則で定める」と記載し、契約書とは別の使用細則を借主に渡す。

当社の場合は、3の使用細則(館内規則)を借主に渡す方法を採用しています。

 

修繕費の負担義務

入居者は自分の不注意で部屋を汚したり設備を壊してしまったときは、修繕費用の負担義務を負います。
ここでよく問題になるのは、自然に故障したり老朽化した部分の修繕まで、入居者が負担する義務があるのかということです。
例でいうと、空調設備の調子が悪い場合、老朽化が主な原因というケースも多いでしょう。
こういう修繕まで入居者が負担する必要があるのか。
この点については、以下の2つに分けて考えます。

  1. それらの事態について契約書に書かれていない場合や、貸主に修繕義務があると書かれている場合
  2. 借主に修繕義務があると記載されている場合

1の場合には、貸主に修繕義務があることは明確です。
2の場合は、借主に修繕義務があると一見すると思いがちですが、そうでもありません。

A.電球やカーペットなど、建物の本体ではないものの修繕や、窓ガラスの破損等、あまり費用のかからない修繕については、借主がその費用を負担することになります。

B.雨漏りや配水管、空調設備など、建物の本体に関するものは、契約書の定めに関わらず、貸主の負担であるというのが、賃貸事務所の契約でも一般的に普通のことです。

したがって、借主に修繕義務があると記載されている場合でも、Bのケースについては、オーナーさんに修繕費用を負担してもらうようにしましょう。

 

契約書の中では、難しく明記されていますが、要するに人に迷惑をかけることを禁止事項として定め、修繕負担については、不注意で破損してしまった場合を除き、建物本体設備は貸主が負担するということになるでしょう。
賃貸事務所の契約の際に注意して読んでみてください。