確定申告の時節柄、賃貸事務所の入居者様から、貸主のマイナンバーについて、相談されることが多くなりました。
マイナンバー制度が始まって一年。最初の確定申告ということで、支払調書に大家さんのマイナンバーが必要ということを知らなかった方は困惑されるかもしれません。そして、これは想定していたことですが、すんなり教えてくれる貸主が少ないという現実もあります。
今回は、どういうケースで貸主のマイナンバーが必要になるのか、また、大家さんがマイナンバーを教えてくれないケースを解説してみたいと思います。
貸主(売主)が個人、借主(買主)が法人に限る
では、どのようなケースで大家さんのマイナンバーが必要になるのか、おさらいしてみましょう。
まず、全ての不動産取引で必要になるかというと、そうではなく、ごく限られた状況だけ必要になります。マイナンバーが必要な場合は、貸主が個人で、借主が法人という場合です。
ですから、一般的な賃貸住宅では、入居されるほとんどの方は、該当しません(個人で借りられると思いますので)。
一方で、賃貸事務所は、借主の多くが法人となりますので、該当するケースが多くなってくるでしょう。
売買の場合は、売主が個人で買主が法人の場合に、マイナンバーが必要になります。
マイナンバーは支払調書に記載しなければいけない
次に、教えてもらったマイナンバーは何に使用されるのかというと、「法人が税務署に提出する賃料の支払調書に記載するため」です。
支払調書は、「個人の誰にいくらの賃料を支払ったか」という報告です。年間の賃料支払額が15万円を超える場合、税務署に提出するので、事務所など事業用の物件はほぼ必要となります。
マイナンバー制度が導入されてはじめての確定申告なので、今はじめて知ったという方も少なからずいるのではないでしょうか。実際に当社にも、ここにきて、大家さんのマイナンバーを教えてほしいという内容のご相談が増えています。
実際、大家さんは教えてくれるの?
個人情報であるマイナンバーを個人の大家さんが教えてくれるのか。という懸念は、マイナンバーが導入された昨年からありました。
では、実際にはどうなのかというと。
「ほぼ教えてもらえません」
大家さんは高齢者が多く、詐欺などに使われる懸念がある中で、マイナンバーを教えてください。本人確認が必要なので、健康保険証も見せてください。というのは難しいと思えます。また、福業などで大家業を営んでるサラリーマン大家さんも、個人情報は開示したくないでしょう。
よく考えてみると当然かもしれません。逆の立場なら教えるかといわれれば、即答はできないのではないでしょうか。誰が悪いということではなく、そもそも制度自体に問題があるとしか思えません。
教えなくてもペナルティがない
実際にマイナンバーの提供を求められた大家さんは、法的に支払調書にマイナンバーを記載する義務がありますので、借主の法人にマイナンバーを教えなければなりません。しかし、マイナンバーを教えない理由のひとつに、マイナンバーを開示しなかったとしても特にペナルティがないということが挙げられます。
義務ではないと捉えられますので、尚更、教えないほうが良いと考えても仕方ありません。
教えて貰えない場合は、経緯記録!
教えてもらえない場合はどうすれば良いか。
大家さんがマイナンバーの提供を拒否したとしても、借主の法人は必ず聴取する必要があります。しかし、教えてくれない大家さんが多いのが現実。
どうしても提供してもらえない場合は、マイナンバーの提供を求めたという経緯を記録しておくことが、現状では、唯一の方法といえます。
文書で提供を求め、それを返信してもらうのがいいでしょう。不動産会社経由で依頼するのが、手間がかからずよいと思います。
最後に
マイナンバー制度は、まだ馴染んでいないという現状から、大家さんがマイナンバーの提供を拒否したとしても罰則規定がなく。また、税務署も今のところマイナンバーの記載がなくても受理してくれるという実状がありますので、当面は大きな問題にはならないでしょう。
しかし、必然的に、いずれ何らかのかたちで変わっていくと思います。その時は、トラブルを避けるために、どのような制度になったか把握しておく必要があるでしょう。
変化がみられたら、またこのブログでお知らせしたいと思います。
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