賃貸の契約は、普通借家契約と定期借家契約の2つの種類があります。一般的な契約はおもに普通借家契約の方式が多いので、2つの種類があるということをご存知ない方もいらっしゃるかと思います。
この2つの契約、何が違うかというと、大きな違いは更新と期間内の解約です。
通常、どちらの契約でも契約期間が定められていますが、普通契約の場合、満期後の更新、また期間内の中途解約がある程度自由にすることができます。
しかし、定期借家契約は、満期が訪れると更新という概念はなく、契約終了となり、原則として中途解約することができません。それを知らないで契約を結んでしまうと、後のトラブルが発生することもあります。
ということで今回は、定期借家契約の中途解約について、詳しく解説してみたいと思います。
中途解約の例外
定期借家契約の中途解約は原則としてできないと述べましたが、原則ということは当然例外があります。一定の条件を満たすことによって、中途解約が認められるケースがあります。それは以下の3つです。
- 居住用として使用(一部分でも可)
全て居住用として、または居住兼オフィス、店舗と兼用という使用で契約していた場合です。 - 床面積200㎡未満
一部を事務所として使用していたとしても全体の床面積になります。 - 転勤、療養、新族の介護その他やむを得ない事情で使用を続けることができない。
やむを得ない事情というのが曖昧で分かりにくいのですが、契約した時点では予測できない事態というのが一般的と言われています。
以上の3つを満たすと定期借家契約でも中途で解約することができます。
これら以外に中途解約するには、契約前に中途解約ができることを特約で結んでいること。それと外的要因で使用し続けることが困難となる事情がある場合です。
外的要因は、例えば、近所に反社会勢力が住んでしまって安心できない。勤務先の会社が倒産して、契約どおりの家賃が支払えない。などが挙げられます。いずれにしても最終的には裁判所が下す判断にゆだねられることになるでしょう。
事務所・店舗など、事業用の場合
前述の例外項目3つの中で、「居住用として使用」という項目がありましたが、事務所や店舗など、物件の全てを事業用として使用する場合は適用されなくなります。
居住用よりも高額な賃料である場合が多く、想定していた家賃収入がなくなるのは家主の負担が大きいこと、また事業用の場合、自己責任によらない外的要因が少ないことなどが理由としてありますが、事業用では、ほとんど中途解約はできないでしょう。
事務所・店舗でも、中途解約する方法
では、事務所やオフィスの場合、必ず期間内は居続けなければいけないのかというとそうではなく、退去する方法はあります。
特約事項
契約前に特別な約束として、期間内解約ができるように交渉してみましょう。
「○ヶ月の予告期間で期間内でも中途解約することができる」など、契約書の内容に期間内解約が明記されていない場合、特約として同意してもらえれば、中途解約することができます。
但し、事業用ではこの交渉はかなり難しく、受け入れてもらえないことが多いので、「契約期間の半分を経過していること」、「6ヶ月の予告期間」など、貸主も受け入れやすい条件にすると可能性が高くなります。
違約金
残存期間の賃料を違約金として支払う。
契約終了まで残り3ヶ月ならその分の賃料を一括して支払うことで退去することができます。しかし、残存期間が長期間の場合、高額になりますので借主にとっては相当な痛手となってしまいますので、そこは交渉してみるのも一つの手段です。
過去の判例では次のような事例があります。
- 契約期間4年
- 入居10ヶ月で解約
- 違約金として残期間3年2ヶ月相当の賃料
- 退去後数か月で新しいテナントが入居
このような事例で裁判所が出した判決は、
残期間の賃料相当の違約金は有効だが、借主にとっては非常に不利な条件であること、また、貸主がすぐに次の入居者を確保していた場合、賃料の二重取りに近い結果になるので、無効になる部分もあるということなどを考慮して、1年分の賃料と共益費額が限度で有効。
このように、特殊な事情(新賃借人を早期で確保)がありながらも、あまりにも長期間の場合、減額されるケースがあるということも覚えておいてください。
※一般的に一年に減額されるということではなく、様々な事情で変わることに注意
合意解除
双方合意のもと、契約を解除する方法ですが、基本的に定期借家契約では契約書上交渉はできませんので、大家さんに相談してみるという形になるかと思います。
ある程度の期間を経ていて信頼関係があることが望ましく、解約しなければいけない事情などを考慮してもらい合意することがいいでしょう。
まとめ
定期借家契約の物件であった場合の注意として。
原則として中途解約ができないこと。それでも解約するときは、残りの契約期間の賃料相当が違約金となることが前提条件であるという点に注意してください。
めまぐるしく変化する経済環境の中で、契約前は期間内に解約することを想定していなくてもあらゆる事情でやむを得ず解約しなければならないということもあります。そうなった時に備えておくのも賃貸オフィスを使用する上で重要になってきますので、今回の記事を参考にしていただければと思います。
定期借家契約の事務所でも、中途解約できる条件をはじめから入れている物件も多く存在しますので、一概に定期借家だから「中途解約できない」と毛嫌いせずに、幅広く物件を探しましょう。
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