事務所における賃貸借契約内容の交渉タイミングと注意すべきポイント

事務所における賃貸借契約内容の交渉タイミングと注意すべきポイント

普段読みなれていない事務所の賃貸借契約書は、慣れていない方にはとても読みづらく難解な部分も多く、物件によって内容も異なることがある為、面倒で読まないまま契約をしてしまうという方もいるのではないでしょうか。

入居後に契約内容でトラブルが起こる原因は、契約前に内容を確認が不十分だったこと事が多くを占めます。一方的に不利な内容は無効になるとはいえ、事前の確認はやはり重要だと思います。

ということで今回は、賃貸事務所物件の賃貸借契約書のここだけは注意しておきたいポイントと内容の確認や交渉をどのタイミングでするべきなのかをご紹介してみたいと思います。

 

確認・交渉するのはいつ?

賃貸事務所の契約の流れはざっくりいうと、「①物件選定→②内覧→③申込→④入居審査→⑤承認→⑥重要事項説明→⑦契約金入金→⑧契約」という感じになります。

では、契約書の内容を確認するのはどのタイミングなのかというと、答えは⑤承認と⑥重要事項説明の間です。

入居審査を終え、オーナーの承認を得られると契約の準備に入っていきます。具体的な契約金額や契約日などを確定させていくのですが、その中で、必ず不動産業者または、貸主から契約書の案文が届きます。契約書の案文は、オーナーそれぞれが自身に合わせた契約書の雛型を元に建物や借りる方に合わせた内容にしたものです。ここで、内容をしっかりと確認し、自分に不利な内容などがあれば、変更してもらうように交渉しましょう。

 

契約書で注意するポイント

契約解除

乙(借主)に以下の事由が一つでも該当した場合は、甲(貸主)は何ら催告を要することなく、直ちに本契約を解除し、終了させることができる。
①乙が賃料等及びその他諸経費の支払いを2ヶ月以上怠ったとき

契約解除の条項では主に、「賃貸借の信頼関係を著しく壊す」ような事由が記載されています。上記の賃料滞納の他、借主の破産や公序良俗違反行為などがあります。

注意しておきたいのは、滞納期間が1ヶ月となっている場合です。まれにあるのですが、ここは2ヶ月以上に変更するように交渉しましょう。

滞納するつもりなんてそもそも無いでしょうが、1回くらいなら、うっかりミスでなんてことも考えられます。その時点で有無を言わさず契約解除なんてことにならないように。

 

保証金(敷金)

乙(借主)が本契約に基づく一切の債務を担保するため金○○円を保証金として本契約締結日に甲に預託するものとする。
乙(借主)が本契約の解約を3ヶ月前に甲に通知し、貸室明渡し完了後一切の債務を清算し、3ヶ月以内に直接乙に対しこれを返還する

保証金(敷金)が契約書で登場するのは主に2つ。預けるときと返してもらうときの条文です。

注意するべきポイントは金額と預託日です。

住宅と違い、事務所や店舗など事業用物件は賃料自体が高いこと、また賃料の3ヶ月~6ヶ月となるため当然高額になります。預託日は、契約時となることが多いですが、まれに契約日前に預託する場合もあります。支払いする日を確認しておかないと、契約時に用意できていないというトラブルになるかもしれません。

また、返還については、返還までの期間を注意してみてください。上記条文では3ヶ月以内と明記されていますが、期間が明記されず、「すみやかに」「直ちに」など曖昧な表現のものもあり、中には1年以内など長期になるものもあります。退去する際にすぐに戻ってくるものと思っていて、次の移転先費用に充てようと計画していたときには、思わぬ出費となってしまいますので、必ず確認しましょう。

 

禁止行為

乙(借主)は下記の行為をしてはならない。
①物件を第三者に転貸し、又は、賃借権を第三者に譲渡すること

禁止行為は主に、第三者への転貸や占有させることや、ペットや楽器などを禁止していますが、物件によっては独特なルールで禁止しているものがあります。

自分の使い方や業種によって、不利なもの、また都合が悪いものが無いか、必ず確認してください。

 

解約

下記の方法により、甲(貸主)又は乙(借主)は本契約を解約し、終了させることができる。
①本契約の期間中においても、甲は6ヶ月前、乙は3ヶ月前までに相手方に対して解約通知書で契約終了日を通知することにより、解約することができる。

解約については、予告期間を確認してください。

賃貸住宅の場合、基本的には1ヶ月前が標準ですが、賃貸事務所の場合、3ヶ月前や6ヶ月前というのが一般的です。

住宅と同じように考えていると退去する際、予定していたよりも長く入居していなくてはならない、また予定していない費用も発生することになります。トラブルを回避するためにも確認しておいてください。

尚、上記条文のように、ほとんどの契約書では、貸主側からの予告期間も定められています。しかし、貸主からの解約は「正当な事由」がないとできないとされていて、法令で厳しく規制されていますので、ほぼ無いのですが、貸主もそれが分かった上で記載していますので、「ああ書いてあるな」程度の認識で良いかと思われます。下手にここをつっこんで交渉すると不審がられる可能性も出てきてしまいますので、注意してください。

 

明渡し

期間満了、解約、解除により本契約が終了する場合は、乙(借主)は貸室の明け渡し迄に乙の費用負担にて、直ちに物件貸室内を「貸借開始当時」の原状に復した上で甲(貸主)に引き渡し、かつ甲より預っている物件の鍵を返還し、契約を終了するものとする。
また、原則として原状回復工事は甲の指定業者にて行うものとする。

ここで注意しておきたいのは、物件を明け渡すまでに、原状回復工事を完了していなければいけないというポイントです。

契約期間満了までその事務所を使用するつもりでいると工事期間がなくなり、思わぬトラブルになる場合も考えられます。この点を認識しておけば、次の移転のときもスムーズにできると思います。

また、原状回復工事は指定業者なのかも確認してみてください。上記条文では、「原則として」とあるので、交渉すれば変更してもらえる可能性があります。もし懇意にしている内装業者があれば、変更を相談してみるのもいいかもしれません。

 

特約事項

特約とは、その契約のためだけに特別に結ぶ項目です。

特約事項は条文にある内容の上書きや補足となるので、本来の条文よりも強い効力となります。ですので、特約事項がある場合は必ず確認しておきたい項目です。

特約で多いのは、フリーレントとそれに付随する期間内解約のおける違約金や保証会社の加入などがあります。

特に注意しておきたいのは、フリーレントを付けた契約である場合、期間内に解約をすると違約金が発生するのかどうかです。認識せずに解約をすると違約金がありトラブルになる可能性がありますので、必ず確認してください。

フリーレント契約の違約金については、以前書いたこちらの記事で詳しく説明していますので、併せてご覧ください。
フリーレントの違約金

 

まとめ

はじめて事務所を借りる、または、はじめて会社の移転担当責任者になったとき、はじめて見る事務所の賃貸借契約書は難しいですし、独特なルールも存在するため読んだだけでは意味がわからないものもあるかと思います。

賃貸住宅の契約を経験していても今回書いた記事のように、事務所と住宅では大きく違う点が多くあります。

ですが、今回の注意ポイントを意識して契約書を事前確認しておけば、最低限のトラブルは回避できると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。