賃貸オフィスの自然災害と保険の話

fb.自然災害と保険の話

地震や台風、大雨洪水など、昨今では専門家でも予期していない、また想像を超える自然災害が頻発しているように思います。想定していない地域での集中豪雨による水害もつい最近起こってしまったばかりです。ある程度は防げるものの、やはり自然災害は起こってしまうもの。では、もし自身が賃借している賃貸オフィスがそういった自然災害で破損などの損害が発生した場合、費用や責任はどうなるのでしょうか、また保険などで補えるものなのかを解説してみようと思います。

 

賃貸借契約はどうなるの?

先に挙げたように、地震・台風・洪水など、天災といっても規模も種類も様々です。基本的に、天災にあって、建物に損害があった場合、賃貸借契約自体はどのようになるのでしょうか?

 

天災で建物自体が無くなった場合

まず、予知、防ぐことのできない天災が発生し建物自体が壊滅して無くなってしまった場合、賃貸借契約はどうなるかというと、民法や借地借家法では賃貸借契約も効力を失い賃借人の権利もなくなるものとされています。

契約書では「天災、火災の為、家屋が滅失した場合、本契約は消滅する」や「当事者の責に帰すべきでない事由によって蒙った(コウムッタ)双方の損害に対しては、その責を負わぬものとする」という内容が記載されているのがこれに当たります。

もし、契約書にこういった記載が無い場合でも、民法・借地借家法の下に賃借人の権利はなくなると考えられます。

 

破壊が一部、小規模だった場合

建物が壊滅する規模のものではなくて、修理するだけで修復できる場合はどうでしょうか。この場合は、賃貸人の負担(オーナー負担)で修繕するのが一般的です。しかし、借主はそれが当然のようにしていると思わぬ負担が発生することがあるので注意が必要です。

退去する時の原状回復でトラブルにならないために、災害が発生した場合に(人命を優先してその後で)まずしてほしいのが、建物の被害状況を把握することです。破損個所をメモ、さらにカメラで撮影しておくことをおすすめします。小さな破損個所もなるべく記録しておきましょう。人に危険が及ぶような緊急性があるものはのぞき、できるだけそのままにしておいて管理会社に連絡するようにし、破損したものが災害によるものであることを確認しましょう。

 

建物以外の破損についての補償は?

災害で起こった被害でオーナーが負担して修復するのは建物だけです。

事務所内の什器や備品、商品の破壊、損害に関してはその範囲ではありません。そのような場合に重要なのが契約時に加入する火災保険です。

 

火災保険の補償

事務所借りる際、ほとんどの物件で火災保険への加入が義務づけられていると思います。この保険では主に什器、備品などを補償する「家財保険」、オーナーに賠償する「借家人賠償責任補償」、水漏れなどで他のテナントなどに被害を出してしまった場合の「個人賠償責任補償」これら3つがセットになっているものが一般的です。
3つの基本セットの詳細は、以前書いた「賃貸事務所の火災保険」を合せてご覧ください。
自然災害で起こってしまった被害は、その内の一つ「家財保険」で補償されることになります。しかし、補償される範囲(災害の種類)は保険のタイプによって異なるので注意が必要です。

ごく一般的な保険では、下記の災害が対象となります。

  • 火災や落雷
  • 漏水
  • 風、ひょう、雪による災害
  • 騒じょう
  • 物体の落下事故

あれ?洪水などの水災は?と、思った方もいらっしゃると思います。

 

実は、水災は対象外!?

冒頭でも書きましたが、近年特に増えている集中豪雨で起こる洪水による水害は、上記のように一般的な保険では対象外なんですね。

加入時にオプションとして付けている場合もあるかと思いますので、確認してみて下さい。物件が高台にあったり、上層階を借りている企業であれば問題はないかもしれませんが、1階や地下などの場合は万が一のことを考えて、保険プランを見直してみるといいかもしれません。保険プランは、加入途中での変更も可能です。

 

今や、どこで起こるかわからない自然災害。
損害責任や補償のことを改めて確認し、考えてみる機会になれば幸いでございます。