会社を設立時の登記申請に、必ず必要になる項目の一つに「本店所在地」があります。
本店所在地とは会社の住所にあたります。
この本店所在地は基本的にどこでもいいとされていますので、
所有している自宅やビルでもいいですし、もちろん賃貸物件でも構いません。
ある程度自由な選択ができるということになると、迷われる方もいると思います。
そこで今回は、本店所在地を決める際の注意点とメリットやデメリットなどをケース別に
ご紹介してみたいと思います。
1.賃貸事務所を契約して登記
設立時からオフィスビルなどの賃貸事務所を所在地とする場合、
契約を個人名義でするのか、または設立予定の法人で契約するのか、
という問題があると思います。
この点に関しては、まず設立前ということで、会社自体が存在していませんので会社名義で
契約することはできません。
この場合、方法としては以下の2つがあります。
- 個人名義で契約をして、設立後に会社名義に変更する
契約する前に会社の本店として登記する旨を貸主に伝えておき、設立後に
名義変更をする旨を契約書に記載しておく必要があります。
- 設立予定の会社名で仮契約をして、登記完了後に本契約を行う。
仮契約ができるのかを事前に確認する必要があります。
賃貸物件では、手付金などの仮で契約を行う事は少ないので注意して下さい。
個人名義で契約する注意点
賃貸事務所を借りる際は、連帯保証人は通常は、その会社の代表者が個人として立ちます。
個人名義で契約する場合、それは困難なので、
別の連帯保証人になっていただく方を探さなければなりません。
事前に連帯保証人なって頂く方を探しておくこと、また貸主に保証人について、
どういう方が望ましいのかを確認しておくように注意しましょう。
メリットとデメリット
メリット
- 最初から事務所物件で登記をするので、移転登記費用や手間がかからない。
- 自宅での登記と違い、ホームページ等で住所を公開しても安心。
- 専用の事務所があるということで、会社の信用性が向上。
デメリット
- 与信
実績のない新設法人の場合、入居審査は少し厳しくなる傾向にあります。
したがって選べる物件は限られてしまいます。 - 連帯保証人
第三者の連帯保証人を要求されることが多いです。
知人か身内の方にお願いするのは、手間がかかりますし、少し気が引けると思います。 - 保証金などの契約費用
事務所を借りる際の契約金(保証金や前家賃などの初期費用)がかかります。
2.自宅で登記
オフィスを借りなくても自宅で仕事ができる手段が、以前に比べ増えてきた最近では、
自宅で法人登記をする方も増えてきているように思います。
SOHO(Small Office/Home Office)のように最初から住居とオフィスの兼用を
目的とした物件も増えています。
もちろん、自宅を本店所在地とすることに問題はないのですが、賃貸物件の場合や
分譲マンションなどの場合は注意が必要です。
自宅を登記する時の注意点
- 事務所として使用して良いのか
賃貸マンションや分譲マンションの場合、契約書や管理規約に、
事務所使用の制限がされていないかを確認する必要があります。
用途として「居住専用」や禁止事項として「事務所として使用してはならない」などの
制限がされている物件ですと、法人登記をすることができません。
(特に賃貸物件の場合、オーナーが事務所使用を許可していても、管理規約で禁止されている場合がありますので注意が必要です)
- 会社名を表記(ポストなど)できるか
事務所としての使用が可能な物件でもポストや表札などに社名を表示できないことがあります。
SOHOタイプの物件でも表示を禁止している物件もあるので、事前に確認が必要です。
(会社名を表記出来ない場合、重要な書類等が届かないなどのトラブルが発生する場合も考えられますので注意が必要です)
メリットとデメリット
メリット
- 新たに事務所物件を借りる費用がかからない。
なんと言っても一番のメリットはこれでしょう。
あまり費用をかけたくない起業時には特に重要なことではないでしょうか。 - 事務所費として計上
住宅ローンなどを組んでいる場合、一部を事務所費として計上できます。
会社のキャッシュフローを考えるとメリットといえます。
デメリット
- 個人の住所が公けになる
ホームページなどの会社概要で個人の住所が知られてしまいます。 - 信用性の問題
打合せスペースの確保が難しいため取引先等を呼ぶことが難しい。
訪問できない相手は不安を感じる場合があります。 - 移転登記費用
設立を自宅でした後で、賃貸事務所などを借りる場合、登記の住所が変わるため、
登記の移転が必要になります。
同一の法務局管轄内の移転:3万円
法務局管轄外に移転:6万円 (移転元の法務局 3万 + 移転先の法務局 3万)
3.バーチャルオフィス・レンタルオフィスで登記
レンタルオフィスとは
オフィスフロアの一区画(1ブース)などを借りるタイプのオフィスです。電話のオペレーター対応やコピー機や会議室などは他のブースの企業と共同で使ったりするタイプのサービス付きのオフィス契約です。
バーチャルオフィスとは
住所や電話番号を借り、郵便物の転送、かかってくる電話にオペレーターが対応するなど、
実際に入居していなくてもオフィス機能が用意できるサービスです。
サービス付きのレンタルオフィスから派生したサービス。
このようなレンタルオフィスや、バーチャルオフィスでも登記が可能なところが多くあります。
メリットとデメリット
メリット
- 初期費用を抑えられる
一般的な賃貸事務所やSOHO物件と比べると初期費用がかかりません。
預ける金額は賃料の1ヶ月程度の場合が多いです。 - 新規設立会社に広く門戸を開いている
多くのレンタルオフィスは、新設会社に広く門戸を開いています。
会社設立のコンサルティングや業務支援サポートを行っている所もあります。
歴史ある企業よりも、起業する方や個人事務所向きと言えるでしょう。 - 一等地のビルに入居できる
レンタルオフィスは主にオフィス街の中でも一等地に建つオフィスビル内に
ある事が多く、新設の会社では通常審査が通らないような有名ビルでも
レンタルオフィスやバーチャルオフィスでは借りることができますので、
一等地のビル(信用性の高い住所)で登記することができます。
デメリット
- 労災保険に加入できない場合がある
従業員を雇用した場合、必ず労災保険に加入することになりますが、
労災保険は、実際に労働者がいる住所で加入するので、
バーチャルオフィスなど実際にその場所で労働者が働いているわけではないので、
それが理由となって加入できない場合があります。 - 銀行口座の開設が出来ない場合がある
バーチャルオフィスの場合、会社名義の銀行口座は開設を断られる場合があります。
その他の注意点
本店所在地によって融資制度が変わる
助成金や融資制度を利用する場合、全国対応の融資制度「新創業融資制度」は、
どこの地域に本店所在地を置いても融資条件は同じですが、地方公共団体が独自に行っている
融資制度の場合、地域によって受けられないことがあります。
近隣の地域のほうが、有利だったりする場合がありますので注意してみて下さい。
番地まででOK
本店所在地の登記は○丁目○番○号までで大丈夫です。
マンション名や○号室まで登記する必要がないので、自宅で登記する場合などは、番地まで登記して
名刺の住所は建物名を省略することもできます。
今回は、新たに起業して法人を設立する場合の本店所在地、いわゆる事務所の設置について
ケースごとに注意点などを紹介しました。
それぞれに、メリットやデメリットがありますので、どれが良いとはいえませんが、
選択の基準は、事業内容や規模、将来的なビジョンを含めて検討されてみてはいかがでしょうか。
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