賃貸事務所でも住居でも賃貸借契約をする前、入居申込書を提出する際に何らかの名目でお金を支払うように言われることがあります。
「申込金」「手付金」「申込証拠金」など、名目は様々ですが、これらは意味が違います。
契約する前に支払うお金ですから、それぞれの性格を正しく理解して注意するべきだと思いますので、詳しく説明いきたいと思います。
手付金はキャンセルすると戻ってこない
手付金は、契約を結ぶ時に差し入れられるお金です。
借主はそのお金を放棄することによって契約をキャンセルすることができます。
一方、貸主がキャンセルをするには、その倍額を返さなければなりません。
つまり、手付金は、正式に契約を結ぶ時に支払うもので、その後契約をキャンセルするのであれば、戻ってこない性質のものなのです。
申込金・申込証拠金はキャンセルしても戻ってくる
申込金や申込証拠金とは、正式に契約を結ぶ前、入居申込時に、借りる意思があることを確認するために、不動産会社や貸主に預けておく金銭です。
この時点では、契約はまだ成立していませんから、入居希望者が申込をキャンセルすれば、これらのお金は返還されます。
しかし、申込みをした場合、貸主はその物件の募集をストップするので、他に借りたいという方がいたとしてもチャンスを逃すことになってしまいます。
そのような点を考えると、安易な申し込みやキャンセルは相手方に迷惑がかかるので、お金の要不要にかかわらず、申し込みは十分に考えたうえで行うのがよいでしょう。
混同されていることがしばしば
手付金と申込金(証拠金)はこのように性質が違うものなのですが、賃貸仲介ではそれらが混同されていることがしばしばあります。
例えば、申込みをする際に不動産会社から「手付金として○○万円支払ってほしい」と言われた場合。
ここで、不動産会社が手付金と言っているのは正確ではなく、預り金(または申込金・申込証拠金)のことなのです。
入居申込みの時点では、まだ賃貸借契約を締結したわけではありませんし、重要事項説明もまだ受けていないでしょう。
つまり、申込みの時点では不動産会社や家主は、手付金を要求することはできないのです。
ただし、入居の意思を確認するために、預り金を預かっておくことは可能なので、上記の不動産会社が言っている「手付金」とは、実際には「預り金(申込金・申込み証拠金)」であると解釈することができます。
手付金を支払うときはここに注意
入居審査も終わり、重要事項の説明を受けると、いよいよ正式な契約となります。
多くの場合には、この時点で礼金や敷金、前家賃などの契約金と仲介手数料が支払われます。
ところが、様々な理由で、全額を支払うことができないという場合があります。
それでも契約するとなると、手付金としてその金額の一部に相当するお金を支払わなければなりません。
前述したとおり借主は手付金を放棄すれば、また貸主は手付金の倍額を返せば、契約を白紙にすることができるのですが、この場合は制限があることに注意してください。
その制限とは、貸主が借主のためにカーペットを張り替えたり、閉めていた電気を開くなど、また貸主が入居するために内装工事を始めたり、相手方が、自身のやるべき行動を始めてしまえば、もはや手付金を放棄してもキャンセルはできないということなのです。
領収書ではなく預り証
入居申込み時に、預り金(申込金・申込み証拠金)を預ける場合には、将来もし入居の申込みをキャンセルしても確実にお金が戻ってくるように、下記のことを記載した「預り証」を発行してもらうようにしましょう。
- 領収書ではなく、「預り証」と記載する。
市販の領収書しか無い場合は書き直してもらう。 - 不動産会社名と担当者名
印鑑も会社と担当者の2種類押してもらう。 - 誰がどのような名目でいつまで預けたのか、どのような形で返還されるのかを記載する。
以上のように、賃貸事務所などの申込をするときにお金の要求をされた場合には、名目によって意味が違うということ、また支払う時に注意する点を理解しておきましょう。
そうすることによって、無駄なトラブルなどの防止になりますので、参考にしていただければ嬉しいです。
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