フリーレントとは、賃貸物件のある一定の期間の賃料を免除する特約の事です。
フリーレントについては、以前にもご紹介させていただきましたが、
今回は、より具体的に契約書の条項などを交えて解説してみたいと思います。
以前ご紹介した「フリーレントのメリット、デメリット」はこちらをご覧下さい。
さて、入居時から発生する賃料が免除されるフリーレント。
オフィスの移転や開設に伴う初期の費用が削減できるということで
非常に大きなメリットとなる特別な契約です。
これは、貸主様が空室を解消するためにとられる手段であり、
入居する側から見ると入居がしやすくメリットだけが目立ちますが、貸主側からすると
免除期間が過ぎた途端に退去されてしまい、損失だけが残るというリスクを負います。
そのような事態になると貸主は困りますので、防止策として契約条項に、
予め中途解約の違約金等の取り決めを行います。
契約期間の途中で解約すると、免除期間の賃料相当の違約金が発生するという
内容のものであり、入居者にとっては、期間内の解約が難しくなるので、
デメリットと言えるでしょう。
ということで、ここで例として実際の契約書からフリーレントに関する条項を抜粋してご紹介
してみたいと思います。
- ケース1(フリーレント期間6カ月)※甲(貸主) 乙(借主)
- 賃貸借要項(A)
賃貸借期間 平成24年8月1日より平成26年7月31日まで - 第6条(賃料及び共益費)
2.賃料は平成25年2月1日より起算とする
3.共益費は平成24年8月1日より起算とする - 特約事項
本契約賃貸借要項(A)に定める賃貸借期間内に乙の申し入れに
より本契約を解約した場合、又は乙の責に帰する理由により本契約が
解除された場合に、乙は本契約第6条2項に定める賃料の免除期間に
免除された賃料と消費税の合計相当額、金○○○,○○○円也を違約金
として甲に支払わなければならない。尚、本規定は本契約書文中、
その他違約金、損害賠償等に関する規定の適用を妨げるものではない。
- 賃貸借要項(A)
- ケース2(フリーレント3ヶ月)※契約期間2011年11月1日から2014年1月31日
- 第5条(支払方法)
2.賃借人は、毎月25日までに翌月分の賃料・共益費を、賃貸人の
指定する口座に支払う - 第19条(賃貸借期間内解約)
1.賃借人は、解約日の6ヶ月前までに賃貸人に対し書面により通知を
することにより、賃貸借期間内でも本契約を解除することができる。
3.賃借人は、賃料・共益費の6ヶ月分相当額を賃貸人に支払い、
即時解約することができる - 特約条項
第1条 本契約第5条2項の定めにかかわらず、2011年11月1日から
2012年1月31日までの期間に限り、賃貸人は賃借人に対し賃料の
支払い義務を免除するものとする。ただし、共益費の起算日に関しては
貸付開始日とする。
第2条 本契約第19条1項の定めにかかわらず、賃借人は、2011年
11月1日から2014年1月31日までの期間を解約日とする本契約の
期間内解約を行う場合は、解約日の6ヶ月前までに賃貸人に対し書面
により通知し、かつ違約金として別途金○○○円(2011年11月1日から
2012年1月31日までの賃料相当額)を支払わなければならない。
第3条 本契約第19条第3項の定めにかかわらず、賃借人は、
2011年11月1日から2014年1月31日までの期間を解約日とする
本契約の即時解約を行う場合は、賃料・共益費の6ヶ月相当額を
賃貸人に支払い、かつ違約金として別途金○○○円(2011年11月1日から
2012年1月31日までの賃料相当額)を支払わなければならない。
- 第5条(支払方法)
- ケース3(フリーレント3ヶ月)※契約期間2013年1月1日から2015年12月31日
- 特約条項 賃貸人は、本契約第5条および第6条の定めにかかわらず、
2013年1月1日から2013年3月31日までの賃料(消費税含む)の支払
いを免除する。ただし、本契約第7条に定める諸費用の起算日は2013
年1月1日からとする - 第5条(賃料・共益費の支払い)
1.賃借人の賃貸人に対する金銭債務は持参債務とする
2.賃借人は、本契約締結と同時に、契約期間開始日の属する分の賃
料・共益費を、以後毎月25日までに翌月分の賃料・共益費を、賃貸人
の指定する口座に振込により支払うものとする。
3.振込にかかる費用は賃借人が負担するものとする。 - 第6条(賃料・共益費の改定)
賃料・共益費が物価・土地建物に対する公租公課・近隣土地建物賃料
もしくは土地建物の管理費の変動その他一般経済情勢の変動に基づく
諸事情により賃料・共益費が不相応となった場合は、賃貸人は賃料・共
益費を改定することができるものとする。 - 第7条(賃借人の負担すべき費用)
つぎの各号の費用は賃借人の負担とする。
(1)貸室内の照明灯、冷暖房機器に係る電気料ならびに、その他の機器
の電気料および照明灯(管・球の交換および器具の清掃を含む)の維持
に要する費用。
(2)貸室内の水道基本料および水道使用料
(3)賃借人が賃貸人の承諾を得て貸室内に設置した施設の電気料・水道
基本料および水道使用料
(4)貸室(賃借人の諸造作・設備・物品を含む)の清掃・手入れの費用および
冷暖房機器の清掃・維持管理費用。
(5)清掃・ゴミおよび廃棄物処理の費用
(6)貸室内の殺鼠殺虫の費用。
- 特約条項 賃貸人は、本契約第5条および第6条の定めにかかわらず、
以上、3つのケースとして、実際に行われた契約内容から、
フリーレントに係る部分を抜粋してみました。
法律的な言葉で書かれていて、長いのでわかりづらいと思いますが、
実際に使われるのはこうした条文です。
わかりやすく解説すると、
ケース1では、6ヶ月間の賃料免除を特約として謳わず、
第6条の条文として賃料の発生日を遅らせています。
そして、特約事項で、途中解約のペナルティ、つまり違約金の
取り決めをしています。
ケース2では、ケース1とは違い、特約事項で賃料免除期間を表し、
賃料に係る条文を指しながら説明を加えております。
そしてさらに、途中解約の違約金の取り決めも特約事項として表示しています。
と、このように、ほとんどのフリーレントの契約は、「入居日から一定期間の賃料を
免除するかわりに、契約期間の途中で解約する場合は免除した分を払って下さい。」
というような内容なんですね。
しかし、ケース3を見て下さい。
ケース2と同じように特約事項で賃料の免除は書かれているものの、
違約金については触れていません。
これは、事前に借主と貸主の間で充分な協議が行われたと見られ、お互いを信頼する
形で出来た契約だと思います。
稀に、ケース3のような契約もありますが、ほとんどのフリーレント契約は、
1、2のように違約金(ペナルティ)の取り決めをします。
ペナルティと言われると、何か損した気分になるとは思いますが、
期間の更新をすれば、入居時の賃料は免除されたことになります。
また、やむを得ず途中で退去しなければならないとしても、
元々フリーレントが無かった物件だったとして考えれば良いのではないでしょうか。
その考え方を踏まえれば、フリーレントを活かした契約は入居者にとって非常に有利な
ものだと思います。
いかがでしょうか。
今回は、フリーレントの条文についてご紹介しました。
実際にフリーレント特約がある賃貸事務所物件を検討されている方、
またこれから移転を考える方の参考になれば幸いです。
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