オフィスビルで保育所を開業するには? ~保育所開業までの障害~

fb.オフィスビルで保育園を開業するには

待機児童の問題や近隣住民の反対など、新しい保育園や保育所が開設しにくいという状況が一般的にも知られるようになってきました。オフィスビルの多い都心部では、通常のオフィスビルで保育所を開くのが現実的ですが、それにも様々な障害があります。

今回は、事務所物件やオフィスビルで保育所や保育園をするための問題を大きな3つの障害に分けて書いてみようと思います。

 

まず大前提として、オーナーの許可が必要になります。

保育所以外の業種でも許可が必要なので、当たり前といえばそうなりますが、オフィスや事務所物件の場合、たとえオーナーの許可があっても簡単には開業ができません。

 

1. 用途変更の問題

一番大きな障害となるのが、建物の用途変更です。

全ての建物は建築する際に使用用途が、あらかじめ登記されています。居住用や事務所、工場用など、具体的に分類されています。これを建築基準法で「用途」と言います。これを決めておかないと、住んでいる隣の部屋が突然匂いのある店舗になったり、そのまた隣が遊戯施設や工場になってしまったりと、これでは、快適な生活環境を守ることはできません。

このような理由で建物の用途が決まっている訳ですが、当然新たに保育所を作るのですから、既存の建物の用途は「保育所」にはなっていません。面積が100㎡を超える場合に、建築基準法で定められた用途を変更するための確認申請が必要になります。

確認申請をするには、建物を建築する際の「検査済証」が必要になるのですが、問題なのは、その検査済証をオーナーが保管していない場合が多いということです。紛失していることがほとんどだと思いますが、検査済証がない場合、その建物が適法であるということが担保されず、用途変更の手続きが不可能という状態になり、保健所の開業の障害になることがあります。
※100㎡未満でも建築士による問題が無いという証明書の提出が必要

 

2. 二方向避難の問題

保育所は出入口の他に非常口を設置することが必要で、非常口は災害時や非常時に異なる二方向に避難が可能になるように設置することが必須になります。

しかし通常のオフィスビル、特に一階部分は、異なる方向の避難経路がとれないケースが多いです。この二方向避難の確保も開設するための障害となることが多い項目の一つです。

柔軟に対処してくれるオーナーさんだと、新たに増設してもらえることもありますが、工事期間など、時間がかかってしまうので、すぐに始めるということが難しくなります。

 

3. バリアフリー

東京都や横浜市の条例では、福祉私設はどんなに小規模なものでもバリアフリー法に適合させなければなりません。

平成18年までは努力義務だったのですが、それ以降は必須となっています。バリアフリー法で定められている内容は、廊下や階段の幅、エントランスに手摺の設置や点字鋲の設置など多岐にわたります。

知事がやむを得ないと認めた場合に緩和されることもありますが、それには申請が必要で認定には一ヶ月くらいの時間がかかります。二方向避難経路の問題と同様に工事着手が遅れるなど、開設するための障害になっています。

 

最後に

上記のように都心のオフィスビルでは、建築に関わる法規の点で障害になることが多く、保育所を開業するために物件を探している方は、できるものを見つけるのに非常に苦労されています。

当社にも多くのお問合せをいただきますが、要件を満たすことができる物件は、なかなか無いというのが現状です。

福祉政策をいくら進めても、このような状況をそのままにしていては、待機児童などの問題は解決しないのではないかと思います。まずはこのような問題を多くの方に知っていただくことが重要でないでしょうか。

そして我々にできることは、保育所を開設するための要件を満たす物件を探し出し、いつでもご紹介できる状態にしておくことだと考えます。そのための準備と努力を怠らないようにして行こうと思います。